ponの読書日記   『がんと生ききる 悲観にも楽観にも傾かず』落合恵子著 ★★★☆☆

落合恵子さんの主催している「朝の教室」で御本人が登壇。二度にわたりご自身のがんと闘病生活、この本の紹介をされた。

 まず、なんと強靭な魂の人だろうかと驚いた。本の扉をめくると、落合さんの著作を発表した当時と抗がん剤の副作用で、丸坊主になった頃の肖像写真が並んでいる。

 

 講演会では、髪がなくなることはなんてことはないと言われていた。そのとおり、ご自身の友人たちを見送られた体験から、髪がなくなったがん患者のひとのことをよく知っていたのだろう。いずれ、はげになっても生えてくるのだと。

 

 医師と患者は同等ではない。実は、患者のほうがサービスを受ける側で権利が保証されるべきだ。しかし、私たちは、医師を別格のひとだと思ってしまう。

落合さんも、もっと色々尋ねたり話し合ったりしたかったことを、あまり医師と意思の疎通ができなかったという。

 また、自然食にこだわり、病院食を食べずに持参した自分たちの売っている無農薬有機野菜から作った食べ物を食べている場面は、これは選ばれし人にしかできないと思った。たいていのひとは、病院食を自分の治療のために食べなければならないと信じている。落合恵子さんの場合の闘病記だから、すべてのひとに参考にな成らない。

 医療の矛盾点などを突いているところは、素晴らしが、マイナス2評価とする。

 治療の詳細、とくに便秘で摘便をされる描写は、悲しかったが、私もそんな日が来るかも知れぬ。もし、私たちが癌になったらどういう治療をするのか、どういう事が起きるのかと、知らぬことを教えてくれる本なのだ。

 しかし、彼女は復活した。早期発見はできなかったようだが、放射線治療が奏功し今も現役。「朝の教室」もクレヨンハウスも八百屋も続けている。

 そして、女性の権利を守るために、福島原発事故被害者のためにも原発の再稼働に反対する活動や、戦争反対、九条守れと運動を続けている。あっぱれとしか言いようがない。

 ただ、何度も未婚で恵子さんを出産して田舎から東京へ出てきて自分を育ててくれた、母上のことが語られていたが、切なかった。

恵子さんのお父さんはどんな人だったのだろうか。優れた人だったに違いない。このように立派な信念のある人が惚れ抜いた男なのだから。家庭を持っていた人なのだろうか。戦死、あるいは病死してしまわれたのだろうか。

ひとりのファンとして私は、恵子さんには普通に結婚して家庭を持ち、ご自身の子孫を遺してほしかった。有能で勇猛果敢な女性は、案外終生独身で子を遺さない人が少なくない。残念だ。実子でなっくとも、多くの「社会的なこどもたち」を育てて、世を良くするひとにしてきたことは間違いないのだが。

 落合家のお墓は自分の代で仕舞うとあり、さみしい。

ponの映画鑑賞感想   『ひゃくえむ。』 ★★★★☆

アニメレンタルで自宅テレビで鑑賞

『チ』作者魚豊氏の原作をアニメ映画化。

短距離走に賭ける、ランナーのリアルな姿が描かれていた。

ごく平凡な主人公だが、小中学校では走るのだけは誰よりも早かった。しかし、成長して伸び悩み、もっと強い相手が出てくる。

陸上競技を止めるのか、続けるのか。

勝てなくなったら、別の道を選べば良いのか。とどまって、努力し続けるのか。

おとなになったら、「食っていく」術も考えなければならない。

気になったのは、主人公のライバルがとても不幸な生い立ちで貧乏そうなこと。しかし、それぞれの登場人物の家庭事情は描かれていない。

「走ることで、嫌なことを忘れられる」とは。そういう打ち込み方もある。

がちんこで勝負することの楽しさがある。だから100メートル走にそれを求めるというセリフは、なるほどと思った。

ただ、もう少し登場人物の背景を詳しく知りたかった。陸上部の女子のエピソードも。なので、マイナス1。

原作を読もうと思う。

ponの読書日記 『母の待つ里』 浅田次郎著 新潮文庫  ★★★★☆

ネタバレ注意!

友人から勧められて、NHKドラマを見てから原作を読んでいみた。

ドラマ化するにあたり、変更されているところもあったが、涙するところは同じ。

定年退職後、悠々自適の生活が送れるはずの裕福な人々が、偽の故郷へ帰り、偽の母親に歓待されるというサービス。一泊50万円。周りの人々、道端で出会う村人も「仕込み」のエキストラだ。

しかし、利用者は皆温かいもてなし、母親の真心に参ってしまう。そして、実の母よりこの母を慕うのだった。彼らは、故郷を持たず、孤独なのだった。

最後に、この母親を演じている「ちよ」が子や孫を亡くしていたことがわかる。

大阪から来る若夫婦は、親に捨てられた者同士だった。「ちよ」の葬儀に駆けつけた利用者に、昔話を聴いて励まされと語る。

ふたりの辛かったこと、苦しかった思い出は、おらがみんなあの世へ持っていくべ。だから、もう忘れなさい。

そうか、行きているものの艱難辛苦を引き受けて死んでいくから、もうお前は苦しみから解放されて良いと言って、ちよさんは死んでいったのか。

東京と地方の格差、限界集落の様子がよく描かれていた。

 

このような、ビジネスは成立するのではないか、と思った。

ちよさんのことが、最後の最後に数行書かれているだけだったのが、不満。

戦争や大災害で、突然家族を亡くしたとき、私たちはどうやって悲しみの中から日常を取り戻していくのだろうか。

辛いことを共有しあい、語り合うこともそのひとつの癒し方だろう。

 

 

サイボーグ化手術から一年

左膝関節が変形して歩くときのみならず、安静時も眠る時も痛むので思い切って左足の人工関節置換手術を受けることにした。すると、右足もいずれ傷んでくるから、同時にやりましょうと医師が勧めた。

いずれもう一方の脚も手術が必要になるだろうから、前もって手術しようと言われたのだ。いや、今悪い方だけで良いです、と断ればよかった。

つい。医師の言うことを信じて両脚一度に手術を受けた。

 

5月27日。手術から一周年。膝の変形は治ったが、傷口が未だに痛む。歩くのに支障はないが、立ち上がってまっすぐじっと立っていると、ピリピリと痛みが走る。火傷をしているようだ。お風呂に入るときには、両膝の皮膚を伸ばしたり縮めたりマッサージをしているのだが。

後遺症なのだろうか。ペインクリニックに行こうか。

背骨と腰骨が曲がっているので、二本杖で体制を保ってはいるのだが、歩くのが難儀である。母に、さっさっと歩ける姿を見せたくて受けた手術だったが、残念だ。母は最後まで、変形した膝で痛い痛いと言いながらも「絶対に手術はしない、皆失敗しているから」と言っていたっけ。

pon の映画評  ARCO ★★★★☆  ネタバレ注意

フランスのアニメ映画を封切館へ行って鑑賞した。夫婦で上映の部屋に入るとなんと、私たちふたりきり。

ふたりのためだけの上映会となった。

 

風景や自然描写、虫や小鳥などの絵が美しいのだが、いかんせん登場人物のあっさりしたアジア人種のような容貌が、魅力なし。故にマイナスいち。

ただし、こどもの考える時空を飛べるマントは、虹色で美しかった。

 

未来の地球に、もっと未来からやってくる少年アルコ。最後の落ちが、タイムパラドックスなのか、面白かった。

ヒロインのイリスは、赤ちゃんの弟と母親役のロボットと暮らしている。

両親は、街で仕事をしなければならず、子育てをしない。ホログラムで会いに来る。

寂しかったのだろう。イリスは、アルコが未来へ帰るなら、自分も行きたいという。

 

3人のギャングのような大人たちは、ズッコケ3人組のようで、おかしかった。

愛するイリスを助けようとした、ピーターが健気でかわいそうだった。

子守ロボットは、雇い主の命を守る。自分が壊れても。素晴らしかった。

衛星劇場 「グラン・トリノ」 ★★★★☆

クリント・イーストウッドの代表作と言える。しかし、あまりにも多作で名作が多いのでそのうちのひとつに推したい。

主人公のクチの悪いじいさんは、妻を亡くしてますます頑固になっていく。人と関わることを嫌い、レトリバー飼い犬のデイジーとビールとタバコの日々だ。

しかし、ベトナムから難民として渡ってきたモン族の一家と関わるようになり、その家の若い娘すーと息子タオと親しくなっていく。

じいさんは朝鮮戦争に出征して、大勢の兵士を殺害して帰還。その後は世界一の女性と結婚幸せに暮らしていたのだが、・・・。二人の息子達、孫たちとはうまく付き合えなかった。

じいさんが、タオをかわいがりいつの間にか、彼の父親のように振る舞うようになる。人種差別の言葉を何度も吐くのだが、モン族の 一家は気に留めない。親世代には英語がわからないからかも知れぬが。

人種や文化の違う隣人を、遂にじいさんが受け入れていくところは、本当に素晴らしい。

そして、彼の一番大切にしている磨いて飾っているグラン・トリノの美しさ。

 

最後の場面はまるで、戦場で殺してきた若者たちに詫びたいから選んだ作戦なのかと思った。しかし、・・・。

暴力には暴力で応じなければ正義は守られないのか。

戦争は絶対に、始めてはならない。

ベトナム、イラク、アフガニスタンから帰還した兵士の苦悩と心の傷は、決して癒されることなく一生続く。

タオとスーの一家に幸あれと祈った。