ponsharaの読書日記

模倣犯』状・下 宮部みゆき著 2001年 小学館刊   ★★★★☆

 

ネタバレ注意!

本作は『週刊ポスト』1995年11月10日号~1999年10月15日号に連載したものに加筆改稿したもの。2年以上の歳月をかけて完結させたという

 今から20年前、私はこれを読んだ。今と同じく図書館で順番を待っていたので、18年前かもしれない。上下2巻になっていたが、上を読了後半年以上も待っただろうか。

 宮部の小説は、読みだしたら止まらない。かっぱえびせん小説だ。とにかく面白い。続きが気になる。頁を繰る手が止まらない。

 

 果たして、還暦過ぎた今読み返してみて(図書館利用)まったく同じ状態になった。続きが読みたくて、止まらない。随分些末な部分を覚えていたが、これほど多くの登場人物がいて、それぞれに人生の物語があることに驚いた。サイドストーリーが、詳しすぎるのだ。もっと、コンパクトでも良かった。故に、マイナス1★

 

 そして、人が殺し殺され、自殺する。あまりにも多くの人が。小説上のことであっても、あまりに痛ましく読んでいて心を傷つけられた。

 

 凄まじいほどの、ヒロミとピースの「女に対する恨み」「憎しみ」を思う。被害者たちの苦悩、観客(この誘拐殺人事件を見聞きしている視聴者、読者、一般大衆)の極悪非道さ。マスコミは、人命や被害者遺族の涙も視聴率に利用する。そして、スクープを狙う。最後の逆転劇は、正に胸がすっとした。

 

しかし、豆腐屋のおじいさんの孫娘は帰ってこない。真犯人が逮捕されても。

 

宮部は、語りすぎた。女性差別、被害者への偏見、知的障害者へのいじめと差別、男の凶暴さ、・・・。ジャーナリズムと正義。

そして、心優しき「カズ」その真の賢さ。

 もっと、短くても充分このテーマは描けたと思う。

 

やや疑問に思ったのは、網川の別荘を警察が調べに行った時点で、もう逮捕状が出されても良かったのではという点。網川と前畑滋子の対決をテレビの生放送で描くために、まだ、逮捕できなかったのだろうか。

ヒロミの携帯が出てきたことと、小樽の女性が網川の声を覚えていたことは物証とならないのだろうか。また、カズの電話相談は録音されていなかったのだろうか。

その続報が、書かれていないのは残念だ。それは、読者が欄外を読めということなのだろうか。

だが、残り頁が少なくなるにつれて、もっと読んでいたいと、ponshara の脳はみゆき中毒に陥っていた。

 

 森田芳光の映画版も見てみようと思う