ほろ苦い思い出

今週のお題「ほろ苦い思い出」

私が結婚する前年の大晦日。私(当時27歳)に今は亡き父(当時56歳)が一緒に紅白歌合戦を見よう、と言った。当時、わが家は新築中で、私は近くのアパートに仮住まいしており、両親は兄夫婦宅にいた。

テレビを愛娘とともに見たい、と父が言ったのに、・・・。私は愛する人と、10年越しの文通を実らせて、5月には遠いところへ嫁ぐ予定だった。

娘と最後に見る紅白歌合戦。そう、父は思ったのだろう。

しかし、私は自分が家族と離れてひとり幸せに暮らしていくことに、罪悪感で一杯であった。毎晩、私がいなくなった後の家族のことが心配でたまらず。泣いていたのだ。

丁度、都はるみの夫婦坂がヒットしていて、私は彼女の名曲のミュージックテープを聴いて、とくにこの歌は涙を流して聴いていた。

 

人は自分の人生は自分で幸せにするべきで、誰かが犠牲になって誰かを幸せにさせることなどできないと、65歳になって初めてわかった。

だが、当時は私がすべての家族を幸せにするべきだなどと、思いあがり、そう信じ込んでいたのだ。ははは

 

涙を流す姿を父に見せたくない。

上辺だけはしゃいで紅白を見ても良かったのだが。

 

ごめんね、お父さん。一緒に紅白を見るぐらい、何でもなかったのに。

父は、その後21年間娘がいない家で、他の家族や飼い犬たちと元気に暮らした。

 

あのときのことをほろ苦く思い続けている、わたくし。あほや。