ゴールデンカムイ 読了

ぽんの読書日記  

ゴールデンカムイ』  野田サトル  ★★★★☆

ネット上で無料公開されている『ゴールデンカムイ』全話を、昨夜読了。

これは、面白い!まさに、大スペクタクルロマンだった。

アイヌの人々の歴史は、和人(日本人)による迫害の歴史でもあるが、それは割愛されており少し残念だった。だが、これはあくまで物語だから、アイヌの人々の文化、とくに狩猟と食文化の紹介が素晴らしかった。自然描写も美しい。

極悪非道な脱獄囚の人生もまた、丁寧に描かれておりときおり、その当時の事件や映画のパロディも挟まれて飽きない。怒涛の面白さが、最終巻まで続いた。まさに、傑作だった。

 

とくに、私が注目したいのは獣姦殺戮を繰り返す動物学者の章だ。これは、かつて誰も描こうとしなかった分野なのではないか。成人向けの漫画には既にあったかもしれないが、少なくとも私は初めて読んだ。

 

小さな彼が動植物を愛するあまりに、一体化したいという欲求。しかし、合体後に自分を恥じて性交した相手を(動物でも植物でも)惨殺する心理。異常だが、少しわかる気がした。

作者は、変態、異常者の人殺しの心理をよくよく学んだのだろう。日露戦争から帰還されたおじいさんからの体験談も、役立ったのだと思う。

戦地で「人殺し」ができないものもいたという。いや、むしろ多数派だったと。

私も、ずっとそう想像していた。だって、農民や八百屋や床屋やパン屋だったものが、いくら訓練を受けて洗脳されていたとしても、生きている人間を殺すことに、躊躇しないはずはなく、殺したひとは無事に帰国できたとしても障害悪夢にうなされたことだろうと。

実際第二次世界大戦後に、帰国した人の中には、精神を病んでずっと入院中の人もいるのだ。ベトナム帰還兵然り、イラン・イラク戦争の帰還然り。

また、屈強な筋肉の男たちがやたら裸になり、闘う場面がおかしかった。

 

あまりにも面白くて、急いで読んでしまった。8日まで無料の間にゆっくり再読したい。