ポンの読書日記

『リバー』 奥田英朗  ★★☆☆☆   長編だが、一気に読了した。10年にわたる五人の連続殺人犯と刑事、被害者の父親の物語。  渡瀬川の両県にまたがる河原に、全裸で後ろ手を縛られた若い女性の死体が発見される。群馬と栃木県警刑事達、女性の新米新聞記者、被害者の父親と3人の重要参考人、そして犯人かも知れない男の通うスナックのママなどの群像劇。  とくに、被害者の父親の一人で、写真館のオヤジの描写が素晴らしく魅力的だった。これには、作者の被害者家族に対する思いを感じた。殺害された女性は皆、自ら進んで身体を売っていた。援助交際パパ活、出会い系……。呼び方は変われど、それは止むに止まれぬ売春ではなく、小遣い稼ぎと性欲を満たすためのもので、犯人はこれを罰するかのようにその仕事後の彼女達を殴り、絞殺した。  写真館のオヤジには、20歳のわが娘がそのようなことをしていたとは絶対に、信じられぬ。  終盤、一番怪しい期間工の運転士が別件で逮捕される。

 私は、彼が犯人でありませんようにと祈りつつ読んだ。彼の母親は、こどもたちが幼い頃に離婚。ふたりのこども(彼と妹)を育てなかった。覚醒剤中毒になり、薬欲しさに淫売となっていた。妹は重度の身体障がい者で故郷松本の施設に暮らしており、彼は毎月妹に会いに行く。

 彼は大柄で柔道ができるが、非常に大人しく穏やかで無口。決して感情を表に出さない。しかし、嘘を平然とつけるサイコパスだった。

 引きこもりで多重人格の金持ちの長男。

そして、10年前重要参考人として逮捕されたが、証拠不十分で不起訴となったサイコパス野郎。はてさてこの三人のうち、誰が真犯人なのか。それとも、模倣犯が現れたのか。    

 

 ラストは、あっけなかった。10年前の事件を解決できなかった元刑事の執念、命がけの活躍は面目躍如、血沸き肉踊る場面で面白かった。

 しかし刑事たち一人一人の書き分けが、明確ではないので、★は2つ