初めての売り上げ

近所に住むノイバラさんに、クリスマスカードの制作を頼まれて、ボッティチェリの「キリストの誕生」を模写してあげた。封筒と可愛らしい切手も準備してさしあげたところ、たいそう喜んでくださった。一枚いくらで売ろうかと考えたが、模写だしコピーだし。実費プラス500円。結局六千円を請求した。

彼女はメリーウイドウ。年末に風邪を引いたからとなかなか代金を払ってもらえず。

ヤキモキしていたところに、お茶会に来て欲しい。その時お代を払うという。正月5日、午後行くと、 ……。

彼女は、このカードがいかに気に入ったか、受け取った友人たちが誉めそやしたかを熱く語ってくれた。お茶会のために、帝国ホテルの通販でフルーツケーキまで取り寄せて。

母の形見のロイヤリコペンハーゲン製の、カップに熱い紅茶を淹れてくれて、……。

 彼女が1996年に、キリスト生誕2000年記念ツアーとして、二週間イスラエルへ行った話を繰り返し聞かされた。今82歳だから、当時は54歳。シナイ山にも自分の足で登ったのだそうだ。また、キリストを讃える歌を皆で合掌した折に、米国から来ていた女性が1mくらいの長さのビニールテープ、キラキラ光るものを付けたタンバリン型のものを、振りながら踊っていたので、思わず「ビューティフル」と声をかけた。そこから、バービー(仮名)さんとの交流が始まり、毎年クリスマスカードのやり取りをしているという。

これも同じことを四度話し、ノイバラさんは上機嫌。そのタンバリンをバービーは送ってくれたのよ。ほら、と見せてくれるのだった。

写真を撮らせて欲しいと、ぽんが言うと、初めはブスだから嫌よと言っていたのに、……。

そうだわmバービーに送ってやりたいから、撮って、撮ってと言い出した。バービーの写真やカード、タンバリンを持って何ポーズもスマホで激写した。

後日、スノーでお化粧した姿に加工してプリントして持参すると、ノイバラさんはまたまた大感激!

大いに喜んでくれた。

素顔のままでいいやないか、とぽんの夫は言ったが、やはり紅を引いた自分の若々しい笑顔を見て、ノイバラさんは破顔した。